大いなる帰還【豚山肥太】

豚山肥太の詩と小説を綴るページ

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

寂しさ

夕暮れにまるで街角のコンクリートになった様な気分で吹く口笛。 母は今日も寝たきりで、病の床。この病気は移るかも知れないと、どの医学書にも最新の論文にも無いことをうわごとの様に言っている。 汚れちまった悲しみに、中也はそう言葉にした。 なぁ、こ…

SMILE

この街で一番高い塔の様なビルに貼り付いた巨大な液晶画面では、僕の知らない若い異性達が時代を羽織って、新しい文化を歌っている。僕はヒノマルを二枚、屋台の店主に渡すと、出来上がったばかりの、ネギとてんかすだけのうどんをすすった。 僕がうどんをす…

今日も気だるい眠気の中を一時間目から突っ走り、というか存分に睡眠を確保しながら、本日の終わりの6時間目を迎えながら、帰宅したら続きをやる予定のゲームの事を考えてワクワクと興奮だけしていた。 昨日までに進んだゲームの中で、確保したもの、広げら…

化学

学生時代の人間で集まって5人対5人で婚活パーティーが行われた、皆、ここいらの島々から出てきていて、僕は丁度、三つ目の編入先の大学の単位も満たせぬままに、あちこち、アルバイトをして食いつないでいた。 初日に、パーティー会場の島で買った新聞では…

夜空の流星群

人間関係で上手くいかない事が重なって、この先の人生に絶望して、僕は殺されてしまいたいと思うようになった。自殺への衝動とほぼ同じであったが、口に出すと言葉は、殺されたいになっていた。 僕はなんとか回っていた家族の中で、父にも母にも殺してくれと…

渇望

僕の地域の柔道の地区大会の最重量級は、長い間、うちの中学の大将が優勝し続けていて、地区に敵無しの状態だった。最近、柔道部の出来た私立の中学校は相当強いらしいという知らせを聞いてから、一月もせぬうちに、僕らの中学とその中学とで合同練習が組ま…

スター

僕の通う学校は体育祭と文化祭、それ以外に毎年、全学年から七人が選出され、皆で高名な学者のもとで合宿を行う。合宿の最後の日に、合宿の成果を全校生徒の前で披露するきまりだ。 今年、僕が選ばれた事を知ったのは、期末テストが終わった後の担任との面談…

コーヒー

久しぶりに遠方に住む友人が僕の家まで遊びに来るのでその日は朝から掃除や友人をもてなす簡単な料理の準備に追われていた。 午後を過ぎた頃に家のチャイムが鳴って友人を部屋に招き入れた。 季節は少し肌寒い日々が続くようになってきて、友人もコートを着…