大いなる帰還【豚山肥太】

豚山肥太の詩と小説を綴るページ

スター

 

僕の通う学校は体育祭と文化祭、それ以外に毎年、全学年から七人が選出され、皆で高名な学者のもとで合宿を行う。合宿の最後の日に、合宿の成果を全校生徒の前で披露するきまりだ。

 

今年、僕が選ばれた事を知ったのは、期末テストが終わった後の担任との面談の時だった。これまでの成績では内申の点数が志望校を受ける点数まで届かない。学者のもとで合宿をすれば、余った分の内申から、成績を振り分けてくれるという話だった。

 

僕はいったい何をするのかを、担任に聞いた。担任は、今のお前ではなくなればいいといとも簡単に言い放った。僕は昨年選ばれた7人が今はそれぞれ海外に政党を作り、活動していることから、負担の強い事が待ってるのでは気が気でなかった。家に帰り、親にプリントを渡すと、なぜだかその日から、晩ご飯は職人さんが家に来て、寿司を握ってくれるようになった。

 

僕が職人さんから寿司の握り方を習うようになり、店舗も二店舗目を任される様になった頃、合宿の招集が行われ、僕はリュックにパンパンに酢飯を入れて参加した。

合宿先の学者先生の家は広く、家というよりも寺社仏閣に近い大きさももっていた。

集められた7人は顔立ちから、身体の大きさ、性別も一辺倒ではなく、色んな人達がいた。

 

僕は何が始まるのかにドキドキしながら、先生に酢飯を握っては渡していた。先生は、やっぱり酢飯が一番おいしいといいながら、僕の用意したリュックいっぱいの酢飯をたいらげると、今度はやっぱり餅は醤油が一番おいしいと言いながら、鞄いっぱいに餅をつめて来た生徒の餅を酢飯まみれの手ですすっていた。

 

気がついた頃には先生は最初に会った時より二倍くらい大きくなっていて、先生の家のあちこちに身体をぶつけて、大きくなるのも大変そうだった。

 

僕らは合宿の間に先生から特殊能力を与えられ、それを生かして今後活躍することを命じられた。特殊能力を得るには何かもっと大変な事が待っているのかと今まで見た漫画やアニメから想像していたが、特殊能力の申請書に印鑑を押すだけでよった。ただ、シャチハタは駄目だと何度も言われた。

 

僕の得た特殊能力は、シネマパスというもので、これにより世界中のこれまでとこれからの映画が全て無料で映画館で見れるというものだった。地味に嫌だったのは3D映画は料金をプラスしないと見れない点を特筆して上げておく。

 

他の生徒達が、重力を操ったり、切れないものはないビームを出せるようになっている中、僕は正直、この能力に不満だった。

 

合宿の最終日に僕たちがこれからの世界を救うスーパーヒーローとして、全校生徒の前に登壇した。それぞれの能力に歓声が上がり、生徒達の目が輝いた。僕の紹介の番も回ってきたが、僕はなぜかビンゴゲームの司会をやらされ僕の番は終わった。

 

選ばれた僕以外の生徒はそれぞれの能力を生かす最善の地へと向かう準備を始めた。僕は担任に内申点の事を確認しておこうと話しかけた。担任はどうにかしてこの映画は見られないかと、今、あまりにヒットしてシネコンでもなかなか見るのが難しい映画を見るのに僕が利用できると勘違いして交渉してきた。僕は自分自身のシステムもまだあまりわかっておらず、担任の交渉に乗り、内申点を確約した。

 

まだ、校内は祭りの中の様な喧噪をたたえる中、僕は一人、学校を後にして、離れた町の映画館に向かった。とりわけ見たい映画があるわけではなかったが、一番何も知らない映画を見ることにした。映画を見るまでにいつもと違うことはチケットを買わなくてもいいところそれだけだった。

 

今後、上映される映画の予告編が流れた後、本編が始まった。

 

オープニングからタイトルまで僕は一気に感情を持って行かれると、僕はこの能力は最強じゃないかと思いはじめた。

 

暗闇の映画館の中で、僕の人生は充実した人生へと向かいはじめていた。