大いなる帰還【豚山肥太】

豚山肥太の詩と小説を綴るページ

白日

僕は気がつくといつもの街にいて、いつものように受験勉強と大阪の柔道部の下級生の新人に怯えていた。

 

そんなことでは気分は晴れませんな

 

そう、前を通りすがった黄色い帽子の老人は言うと僕に口笛を吹くことを強要した。あいにく僕は口笛がふけなくて、老人に誘われた柔道の世界選手権の大阪大会の井上康生の内股の素晴らしさに口笛で歓喜を上げられず、しこたま落ち込んだ。

 

風を買って、安い風を買って。それを使って会場に竜巻を起こしてそれを自分なりの賛美とした。うまい具合に竜巻がハマり、僕は銅メダリストとして、大会の公式記録に記載される運びとなった。

 

僕はその肩書きを起点に永田町で暗躍し、日に日に成長する自宅のカメレオンを見つめながら、どんなに美しい色を今度は見せてくれるだろうと、カメレオンの色に思いを馳せた。

ナッツは割と糖質が低い事を教えてくれたワイルド・ジャックは、僕の前から姿を消すと白日の下にさらけだされたナメクジのノミ行為を和気藹々の雑談に変えた。

 

政治とは三人から始まると昔読んだ言葉をなぞるように、古今東西の名言から新しい名言を盗作し、捏造する組織を自宅の傍のタワーマンションに作り、そこで作られた偽造名言をラジオ、テレビ、新聞、雑誌、ネット、あらゆる場所とメディアで吐きまくった。

 

いつの間にかノーベル文学賞を取り、まもなく、全てをナメクジのノミ行為以上に異常に白日の下にさらされ、僕の偽造はあらわにされ、何もかも失った。

 

何も無い。

 

それも幸せだと気がついたのは顔を丸々変えて、別人として生きだしてまもなくの事だった。

風呂、飯、ささいな仕事、性の処理、排泄、深い眠りと悪夢の中の街。

人生、それだけでも充分事足りる事を知り、偉大な大いなる帰還は完了した。

 

すべて、夢だったのかも知れない。少しビターというには激しすぎた半生を振り返り、僕は新しい門出に立った。ゲージンならハローとでもグッドモーニングとでもいうのだろうか?僕は朝陽に向かい、右手で銃の形を作り、日の出の太陽を打ち落とした。

 

朝は終わった。これからは夜の中に真実があることがすべてだ。

怯えたコンビニ店員は今、絶頂を迎えたドーパミンの氾濫の中、大航海の旅を終えた。

 

ノーライフキーーーーーング!!

 

昔読んだいとうせいこうの小説のタイトルがたまらなく叫びたくなって、僕はレーザーで作られた方眼紙の中央でとてつもない巨大な雄叫びを上げた。

 

そういうことです。

 

どこかで訳知り顔の看護助手エリはそうつぶやくと腰掛けていたタワーマンションの60階から飛び立ち、どこまでも飛んでいった。

 

それがまるで紀元前の出来事でもおかしくないくらいに、ものまねされるジャイアント馬場の哀しみより深く、まるで未来には何もないといっているかのように

 

太陽は蘇り、朝陽を浴びたアフリカの女性が子供を授かった。

 

さぁ、人類。どこへ行こう?