大いなる帰還【豚山肥太】

豚山肥太の詩と小説を綴るページ

僕が音楽だったころ【詩】

夜の街を五線譜をかけるように縫うて走る

僕はまるで音楽のよう

ここは銀河か 大舞台

悲しみがありて 喜びがある

喜びの最上級は 失い なのだと いずれ君も知ることになる

あるいは、悲しみなのかと。

 

世界はまるで、音楽のようで、僕も夜の街を縫うように走る

世界が調和する 美しさは一定

 

私は銀河系に一番近いところで 夜を寝過ごしている

 

醜いな 愚かだな どうして 人間に生まれたのだろう

 

悲しみの結晶はやがて 私の中で 記憶へと変わる

気がつけば 僕は もう 86才になっていた

 

何を掴めたのだろう 何を目指していたのだろう

 

恒星の様になりたかった

 

だけど、しょせんは端くれだ。

 

言葉の末尾。検索エンジンの箱。トイプードルのマスコット。

 

僕が音楽だったころ。僕はとても自由で、気晴らしなんて、する暇もないくらい、満ちていた。

 

滑稽だったけど、電車から降りて、走り出す電車に大きく手を何度も振った。

 

さようなら さようなら 僕の人生の充実期。

 

そんなことを思いながら。