大いなる帰還【豚山肥太】

豚山肥太の詩と小説を綴るページ

雲から降る音楽

誰だろう?こんな美しい雲を描いているのは

僕は空を見上げながらいつまでもそうしていたかった。

ラジオカセットのボリュームを上げて、そう、まるで空から音が降ってくるようで

僕はそのまま、音楽になってしまいたかった。

バイトもろくに続かねぇ。直ぐにストレス性の〝何かで〟ややこしい病気になってはなおしての繰り返し

そこで走ろうとしたけれど

もう身体が重くて何一つ掴めない

せめて世界選手権二連覇、せめて娘のハートつなぎとめ

ポケットに入れていたスマフォが鳴り出して

僕の立つ大地はせり上がり食用に繁殖されたコオロギがみんな揃って鳴いている

音楽とコオロギの音がまさにオーケストラ

くだらないよ

小学校時代のちっぽけな挫折なんて

もう誰も覚えていないよ

自分に優しくするように

いくつも心に刺さったままの小さな痛みのトゲを取っていった

それから自販機で羽を買って

少し考えて

翼をくださいと歌っていた歌手に届けたけど

そういうことじゃないのと突っぱねられた

難しいと思いながら

僕は翼をつけて空を自由に飛んでいった

 

人生の目的

幸福とは何?

死ぬ前に幸せと思えるとは?

ディープキス

優勝

 

昔は大事に思えた言葉が空から降ってくる

音楽が沸点に達してそれはとてもとても綺麗なこと

加速に加速がついて翼ももげてしまいそう

 

僕は蜃気楼のようにゆらゆらとゆれる愛になって

全宇宙を抱きしめてよく眠ることにした

明日は遊園地に行こう

 

今夜は少し冷えるから

ふとんを厚めにかぶって

小さな音楽の中揺れながら