大いなる帰還【豚山肥太】

豚山肥太の詩と小説を綴るページ

行き先【超短編小説】

ねぇ あなた そんな 拙い 足で ここまで来たの

旅人の傷は深く しんしんと そして やがて 雪山は嵐が襲う

旅人をみつけた村人は 救いようがないことは もう 知っていたのだ

旅人の頭の中を地獄が巡る

荒くなる 呼吸

息も絶え絶えに

旅人は発す

ソラミタコトカ

コレガ オレノ イッショウダ

村人は手当ての手を止めた

呪いにかかったかの様な瞳の奥の傷

深い深い傷

だれにもすくえないきず

邪をまとったかのような顔つきに旅人はなると

薄気味悪く笑うと

一枚 の 切符を 村人に 渡した

息を引き取った旅人は穏やかで

雪は嵐で

村人は亡骸を置くしかなく

切符を握りしめて 村に帰った

旅人の名もどこから来たのかも

わからずじまいだった

切符には行き先が書かれてあった

帰れたのかもしれないと 村人は思っていた

行き先へと