行き先【超短編小説】
ねぇ あなた そんな 拙い 足で ここまで来たの
旅人の傷は深く しんしんと そして やがて 雪山は嵐が襲う
旅人をみつけた村人は 救いようがないことは もう 知っていたのだ
旅人の頭の中を地獄が巡る
荒くなる 呼吸
息も絶え絶えに
旅人は発す
ソラミタコトカ
コレガ オレノ イッショウダ
村人は手当ての手を止めた
呪いにかかったかの様な瞳の奥の傷
深い深い傷
だれにもすくえないきず
邪をまとったかのような顔つきに旅人はなると
薄気味悪く笑うと
一枚 の 切符を 村人に 渡した
息を引き取った旅人は穏やかで
雪は嵐で
村人は亡骸を置くしかなく
切符を握りしめて 村に帰った
旅人の名もどこから来たのかも
わからずじまいだった
切符には行き先が書かれてあった
帰れたのかもしれないと 村人は思っていた
行き先へと