大いなる帰還【豚山肥太】

豚山肥太の詩と小説を綴るページ

口吻姫【超短編小説】

昔々のおとぎ話の本の中に、くちずけ姫というそれは、醜い女が暮らしていたとさ。

彼女は、おとぎ話の様に、自分は呪いにかかったものだと、決めつけて、きっと、いつかどこかの王子様の口づけで自分はたちまち、美しい姫へと、呪いが解かれる違いない
そう、信じて暮らしていた。

ある日、親切な隣のおばさんが、街にいいお医者がいるから、「今は、いい薬が出ているから」と、心療内科をくちずけ姫に紹介した。
くちずけ姫は、毎夜のエレキギターの練習もほどほどに、次の日、保険証を持って、心療内科に出かけた。

心療内科の医者は言う。

これを2週間飲みなさい、そしたら、また、来なさい。

くちずけ姫は、新薬の抗うつ薬と、安定剤、なんかをもらって、家路についた。

2週間もしない間に、くちずけ姫の鏡に映る自分の姿は、見事に変わっていった。

まるで、呪いのとれたかの様に、くちずけ姫は、うら若き乙女へと、姿を変えていった。

もう、それから、30年以上がたって、本の中から抜け出て、くちずけ姫にも、月給取りの王子は現れ、今ではビア樽のように幸せに暮らしている。

王子様でもなくっていいの

あたしには それが お薬だっただけ

あなたには 友達かも知れないし

ギターかも知れないし

王子様でもなくっていいの

王子様でもなくっていいの