ものすごくちょっと【詩】
ものすごくちょっと
二時間と少し、だいたい毎日、レンタルビデオ見ている。
僕の通うレンタルビデオ屋はとてもちいさいが、少し想像してみる。
広大な敷地に立てられたとてもおおきいレンタルビデオ屋。
そこには、世界中から集められた映像が、ズラリと整理されて、置かれている。
いろんな時間から集められた、いろんな出来事やいろんな景色。
なんでも、そろってると、とてもいい。
僕は、何をみていいか、少し考えるが、すぐに思いつく。
ある新婚夫婦の一日。
その夫婦に新しい家族が加わった日。
僕の生まれた日。
おかんは、初めて見たとき、「猿かと思った。」と言っていた赤ん坊。
親父は、その赤ん坊の生まれた事を知って、ただ泣いていたという。
夜の11時33分。僕は生まれた。
あの時、産声を上げた僕は、肺いっぱいに吸い込んだ。
誰かと誰かと誰かと、大勢の人達の吐いた息の混じった空気を吸い込んだ。
そして、自分で呼吸して、息を吐いた。
それからずっと、誰かの吐いた息を吸い、僕の吐いた息を誰かが吸う。
この今の瞬間もきっと、僕と誰かはそうやって繋がっている。
たった今、僕の吐いた息が、ものすごくちょっと混じった息を吸い込んだ赤ん坊がいる。
“せいぶつ”がいる。
「ものすごくちょっと」、そうやって新しい命と僕は繋がっている。
「ものすごくちょっと」、そうやって古い命と僕は繋がっている。
生まれて、呼吸して、僕らはそうやって繋がっている。
言ってしまったら、死んだって、「ものすごくちょっと」は、この地球に僕は、混じっている。
生まれて、呼吸して、僕らはそうやって繋がっている。
そう思うと、ものすごくちょっと心強く、僕は生きれるんだ。