大いなる帰還【豚山肥太】

豚山肥太の詩と小説を綴るページ

名も無き人への切符【詩】


彼女はいつもことばかずが少ない。

100年間に渡る、人々の争いを見続けながら

彼女の発した言葉は

アイ ラブ ユー

ミー トゥー

だけだった。

 

今世紀の終わりにかけて蔓延した

言語の体系的な破壊は

ベゲタミン

ベゲタミン

ボルタレン

ボルタレン

 

スープの冷めないうちにパーティーにお誘いを

しょうもない役人がすったもんだで

エネルギッ使うほど、馬鹿ならぁ、スティ スティ

スチルでできたラクダの怪物。

君のフォルダーにはあの写真は、まだ、あるの?

 

スケッチライフ

スケッチング マイ ライフ

大きな白い歴史を買った

生まれたばかりだそうだ

サンダルの乾いた音が玄関で鳴るからあの人だ

やさしい口笛だからあの人だ

バージンフライトにはお気をつけて

保険でも入れりゃなぁ

ラッキー コイルズ 20000ボルツ

ラッキー ビンセント ファミリー

口説き文句はオーソドックスに

脳からがら

胃腸にいたっては遜色なし

ビクトリア ズ ベゲタミン

マッカーサーの レンドルミン

ポーツマスの ボルタレン

三姉妹揃って

嫁入りだ

バッターボックスには

くだらない男が立っている

高校三年間

エロ本一冊も買いにいけなかった

AV一本 見れなかった

くそまじめが立っている



翼を奪ってやってよ

夢も能力も、そしてささやかな日常を渡してあげておくれ



名も無き人に

なるために

そして彼女は歌いはじめる

どこまでも響き渡る

どこまでも澄んだ声で

 

もいだ翼であしらえた

名も無き人の

素晴らしさを

 

くだらない人生の

素晴らしさを