大いなる帰還【豚山肥太】

豚山肥太の詩と小説を綴るページ

帰郷

夕方には涼しい風が吹き始めた頃に、僕は故郷の温泉地で開かれた集団お見合いに参加した。

同級生も何人か参加するらしく、僕は密かに胸を高ぶらせて帰郷の途についた。

あの子はどうしているだろう?

 

そのことばかり考えながら、僕は新しく作られたお風呂付きの個室のある車両に乗って、故郷の町に向かう、湯船につかりながら、風呂上がりには柿の種のわさび味を食べようと上機嫌だった。

 

故郷につき、実家に寄ることもなく、駅前のシティホテルにチェックインして、集団お見合いの開かれる会場のあるホテルに向かった。途中に同年齢の男女を見ると、同級生の気がして、ドキドキする気持ちが高ぶっていった。

 

ホテルにつき、集団お見合いの受付をすませ、ホテルの地下にある、地下格闘技場に向かった。観客の入りもまぁまぁで、僕は集団お見合いはまだかまだかと、自分に与えられた控え室で入念に、アップを繰り返した。

 

係の人が呼びに来て、僕はリングに向かった、今日は5vs5でのお見合いになる。僕は女性陣の顔ぶれを確認した。一人とびきり懐かしい初恋の相手であったメキシコ人レスラーがいた。

髪の長い整った顔立ちをしたマスクをしている。僕の胸は沸き立った。

 

男子、女子、それぞれ作戦を確認し、ゴングが鳴り、集団お見合いは始まった。

僕の狙いは、メキシカン一択。きっとアッパーで仕留めてやるさ。

集団お見合いは始まりだし、レフリーや解説や実況を巻き込んでの大人数での人生ゲームが始まった。

ゲームも中盤にさしかかった所で、激しく、ルーレットをみんなが回し過ぎたせいで、ルーレットが壊れてしまった。みんながどうしようとしているそのタイミングを狙って、僕は見事なまでのアッパーカットをメキシカンに食らわせた。会場からは大ブーイング、レフリーから往復ビンタ、携帯の番号のタトゥーを額に掘られることとなった。

 

それでも、そんな不器用な僕のやり方に興味を持ってくれた子もいて、控え室には、トラック12台分の粗大ゴミが届いていた。僕は粗大ゴミを全て分別して、市の粗大ゴミの収集を担っている部署に連絡して、品目別に、費用を払い、買ったシールを粗大ゴミにすべて貼り付け、回収を待った。

 

上空からUFOのような巨大な飛行物体が現れて、僕は粗大ゴミと一緒に、光の中に包まれていった。

 

映画のラストみたいに上手くは終われないのさ、人生は途中で突然に終わる

 

僕がそれをUFOの中でマッキーで落書きしていると、UFOを運転していた市の職員さんが、激怒して、僕はこれ以上はないというくらいの見事なアッパーカットをくらって、UFOからも落ちていった。

 

僕が落ちた先は、どこかの家の前で、僕はスーツについた汚れを払うと、ドアを開けて、家の中に入っていった。子供がお父さーんと言って、駆け寄ってきて、その向こうでは妻が笑っていた。

 

すまないと僕が妻に謝ると

 

いつものことよと妻は笑って、夕食の支度を始めた。