2020年の豚山肥太のことのすべて

豚山肥太による詩と小説を綴るページ

行方【超短編小説】

 

大事すぎて触れられないものがある

 

大事すぎて誰にも売れないものがある

 

大事すぎて壊してしまったものがある

 

 

時間はただ、ひたすら不可逆的に流れていく、それでいいんだ。それでいいんだ。

 

 

僕は東海地方の電車の路線図を見ながら、行き先と乗っている電車が合っているのかを確かめていた。スマートフォンのはじの方まで路線図は表示されてると、それ以上は表示されなかった。覚えのある名前の駅までとりあえず行こうと、僕は電車に揺られた。

 

車内を売り子が、駅弁やコーヒーなんかを売り歩きに来たので、僕はNINTENDO64マリオカートとコントローラーを三つ買った。周囲の乗客にこれ四人でやると面白いんだと説得して、みんなでマリオカートをしようと思ったが、売り子の人がおまけでつけてくれたSwitchとそのソフトのガチャポン戦士2 ガンダム戦記 の方にはまってしまって、とりあえず行こうとしていた駅の確認も忘れてゲームをしていた。マリオカートに誘った周囲の乗客はやってられないと、暴徒化すると、電車内は火炎瓶が飛び交いえらい騒ぎになったが、全ての乗客にアイスクリームが配られると、みんなで大人しくアイスを食べた。

 

それにしても、路線図がわからない、知っている駅名の場所で降りるにしても、そこからどんな電車が出ているか、停車駅はどこかがわからない。もっといいアプリを入れておけば良かったと後悔した。僕の使っていたアプリは誰かが子供向けのボードゲームのすごろくを撮影しただけのもので、週に数回クーポンが配信されるものだった。目新しいクーポンもなくて、僕は切符の確認に来た車掌さんに、長い坂道の下にある、目的地の駅への行き方をたずねた。車掌さんは、それならとと言うと、電車の窓を開けると、僕のお尻を蹴り上げて、僕は電車から落っこちるととんでもないスピードで転がった。

 

真っ直ぐです。ずっと真っ直ぐ転がって下さい。真っ直ぐです。

 

という車掌の声が聞こえていたが、絶対奴の事は忘れねぇとも心の中で悪魔に誓いを立てていた。そう思いながらも、ありえないスピードで僕は、転がっていた。真っ直ぐ転がるってなんなんだよとも思いながらも、真っ直ぐ転がれるようにつとめた。肋骨の二本や三本折れているのは覚悟しながら、平たい所まで来て、更にかなり、転がって、僕は止まって。二日くらいぐったりしていた。目が覚めると、献花台やお供え物が置いておかれていて、まだ生きていることを、ほっぺをつねって確認すると、頭に花を飾って、お供え物を食べて、また、目的地に向かって歩き出した。

 

車掌の案内は出鱈目で、目的地どころか、やけにラベンダー畑がきれいだと思っていたら、何のことはない、北海道の富良野に僕は転がって来ていた。僕は野狐禅の結成秘話を聞いたり、野狐禅ゆかりの場所を訪ね回ったりに夢中になっていた。ここが目的地でもいいかなんて思っていた頃に、鹿児島中央駅までの切符を、マリオカート仲間からもらったので、また、僕は列車に乗って、目的地ではなかったが、鹿児島中央駅を、目指した。桜島へ行きたい。その頃にはもう、頭にバンダナを巻いて、ブルースハーモニカを首から下げて、僕は長渕剛の「TIME GOES AROUND」の中の

 

ホテルのベッドに横たわり

信じられないほど抱きしめた

 

という歌詞にしびれまくっていた。とんでもない歌詞だとあらためて思いながら、Yairi のアコースティックギターかき鳴らして、鹿児島中央駅へと、僕は揺られに揺られていた。ポケットの中のコーラはえらいことになっていた。

 

途中、東海地方を、列車が走っている時に、停車した名古屋駅のありとあらゆる暴力に反対しますという広告にニッコリ笑って写っているのが、僕を蹴り落とした車掌だったので、悪い冗談だと思いながら、スマートフォンの写真ではなく、動画でその広告を撮影して、YouTube にアップして、再生回数を稼ごうとしていた。最近のYouTube はTVに出ていた芸能人がいっぱい入ってきて、あんまりTVと変わりがなくなってきたなと思いながら、自主制作アニメのタグに何か新しいものはないかと検索しては回っていた。

 

そうこうしているうちに、列車は鹿児島中央駅につき、駅から出ている観光用の巡回バスに乗って鹿児島を観光した。見晴らしのいい高台にのぼって、桜島を写真におさめると、白くまのアイスを食べながら、思ったより簡単にフェリーで桜島に渡った。

 

桜島長渕剛のライブの後に出来た「叫びの肖像」の絵ハガキを探したが、手に入らず、フェリーの中の売店の店員さんからも、売っていないことを告げられた。

 

僕は「カラス」にするか「STAY DREAM」にするか迷ったが、「GOOD-BYE 青春」を、鹿児島中央駅でギターかき鳴らし歌った。

 

誰かが見向きすることが問題じゃなかった

 

生きている心地が全くしなかった

 

まるでビニールにでも包まれて守られているようで

 

僕は次の目的地を決める前に、GRAPE VINE の「ぼくらなら」を流すと、券売機にお金を投入した。

 

「真っ直ぐに転がれってのは何かの比喩かよ」

 

乾いた心でそうつぶやきながら