夜のセツナセツナセツナ【小説】
いくつかの抽象画のタイトルを書き終え、僕は無事大学に入学した。
購買部に筆や絵の具を買いにいくと、それは僕の住んでいたマンションの隣に立っていて、いつも働く露店型のコンビニがあり、購買部の中では、セール中のサイズの大きい服が沢山売っていた。
学生運動が華やかな頃だったから、僕は新聞部に入った。
新聞部は革新的な考えを訴えていたが、新聞部の中は、押さえつける力とコントロールする力に溢れていた。
入学する時に会った彼女も新聞部に入ったようだが、彼女も矛盾の中に苦しんでいた。
色んな嫌がらせを受けながら、新聞部の同期にある真実を話していると、紙に録音ボタンの書かれたようなのを出してきたので、同期にたずねると、この紙でクラウド上のストレージと繋がって録音できるのだという。
僕は紙を裂いて、新聞部を後にした。高い高い校舎の上から、新聞部の同期が水を落としてきた。
僕は帰る道を急いだ。
いつもの帰り道のはずだが、乗る電車を間違えたらしい、あの駅の乗り換えの終点の駅に来たからどうなることかと思ったら、そこから地元の駅へはすぐであった。
いつの間にか交通手段は進歩して、僕らはそれにも気がつく事ができない。
彼女の記憶がかすかに残りながら、僕は眠りに包まれていた。
今年で46になる。
記憶が複雑に絡まって、結晶にもなれずに、学生帽が闇夜に浮いている。
ときめいた胸だけ残して、記憶は全て消えていった。