大いなる帰還【豚山肥太】

豚山肥太の詩と小説を綴るページ

自己憐憫に愛と男【詩】


あなたが疲れると

 

優しい男がやってきて

 

あなたの傷をいやすだろう

あなたがさみしいと

 

口の上手い男がやってきて

 

あなたの話を聞くだろう

あなたが眠たいと

 

ベッドの男がやってきて

 

あなたを深く眠らせるだろう

あなたがお腹を空かせると

 

料理の上手い男がやってきて

 

あなたの口を満足させるだろう

あなたが歌を歌おうと

 

耳の男がやってきて

 

いつまでも、あなたの歌を聴くだろう

あなたが買い物に出かけると

 

財布の男がやってきて

 

あなたの買い物について行くだろう

 

時々、すごく怖くなる

 

私を愛した女性は母親だけじゃなかったろうて

せめて言葉よ

 

私を愛して下さい

あなたの中で私は宇宙をも構築する

あなたの行く先に新しい国を作りすらするを惜しまない

 

くだらない奴だ

 

女々しいね

そうやって心のきびすがかえすけど

私はあなたを尊皇攘夷

 

事実明白

私は言葉に殉教する

 

テレビはロッキード事件の続報を伝えている

ああ

 

そうか

 

結局 私は

しかめっつらで歩く

 

オフロード

愛などいらぬ

 

恋などいらぬ

ああ

 

そうだった

 

私は

知っていたのだ

自己憐憫の百花繚乱で

私さへも私を愛せぬ生涯だったと

 

格通知に書いてあったことを




遠く 遠く 砂丘の上を

 

歩いている人がいる

 

どこまでも どこまでも




アスファルトの冷たさに気付いた男がいる

アラームの鳴る音で起きたばかりの女がいる

喧噪に向かい始める街の静かなスタートがきられた



付け加えるならば、砂丘に人の現れることはなかった



人は時に 交わりながら

時に 誰とも 交錯せずに

その生涯を生きる



悪くはないさと

 

しかめっ面でいく

 

オフロード

 

吸えないタバコを

 

くゆらしていく