大いなる帰還【豚山肥太】

豚山肥太の詩と小説を綴るページ

夢中人【詩】

空がくだらないことをうそぶいて

 

僕もしばらくさまよって

 

架空の気持ちを作り出しては

 

怯えて、一人の部屋にこもった

 

傷つかなくていいからと

 

家財道具に一汁三菜詰め込んで

 

ただ、人の心が怖くてならなかった。

明日になれば、

 

全く違う顔

そんな風なことを何度も見たから

 

傷つかない場所で

 

穏やかな時間を過ごしている。

 

美しい石像ばかりを作ろうとした時もあったけれど

 

今は保育園のバザーに出す細工品を作っている

 

そんなメンタリティで一日が終わる

どれだけ温めようとしても

 

どれだけ言葉を渡しても

ガラス瓶の中で

 

ガリガリの男が

 

寂しい 怖い と震えている

そいつに

 

叱咤激励

 

殴打を加え

 

いくぜ タフな戦いさ

どうして あの日

 

彼女を許せなかったんだろう

薪をくべるようにセンチメンタルの拍車は止まることはない

 

捏造された紙幣をすべりこませ

 

愛を買いに

 

開店前のスーパーに並ぶ

タフな戦いになる

割れた月は太陽に落ちると

 

焼き芋のアルミ箔の様に燃えていった

架空の気持ちだけれど

 

すごく正しい気もするんだ

 

だから、怖くて

 

特急列車で、どこまでも、どこまでも、逃げていくんだ。

行き先は、いつも、自分の部屋。

 

ここは大丈夫と、気持ちを落ち着けて

ジブリのドキュメンタリーを片っ端から見た。

繰り返す言葉は

 

アー ユー ハッピー?

 

何度も 何度も

 

自分にたずねるよ

 

何かになろうと思っていきてきたけれど

 

山道の雑草の素晴らしさでいいと

僕は、何度もまばたきでシャッター切りながら

 

まぶしすぎる

 

冬の夜の街を

 

あてどなく

牛丼一杯分くらいの空腹を満たしに出かけた。

誰にも会えないのさ

 

誰にも

 

そう、それは知っている。

 

そうして、温かい繭の様な

 

布団にくるり、丸まると

 

また、夢の世界での暮らしがはじまった。