大いなる帰還【豚山肥太】

豚山肥太の詩と小説を綴るページ

夜の向日葵

寂しい夜が続いて 泣いたり わめいたりも もう 疲れた頃

恋文に似た気持ちで 絵を描きます

夜に日はのぼらない 夜に日はのぼらない

そう 繰り言のように 自分の中に ことば を落として

ゴッホの事を考えます

僕は絵描きの生涯といった類いの話は なるたけ読まないようにして生きていますが

悲劇的な最期を遂げた ゴッホにも 絵を描く友達も 少なからずいたと 聞いています

ゴッホは 激しいものを 抱えていたのでしょうか 自分の耳を自分で切る事もしたそうです

この年齢になって よく思うんです

自分に流れる 血について

昔の自分からしたら くだらないで すましていた

それは 日本人だとか そういう類いではなく

血族といえる 僅かな 血のつながりです

中学の時に 初めて 意識的に 描こうとした物語の 冒頭が

不幸の果実を 手に取りて むさぼろうとした その時に 必死に 生きる 血族を見た

というものでした。よく似た歌詞があるのを知って、描くのは辞めました。

なにもかも 投げだそうとした 人間の横で ベランダでは 母親が必死に洗濯物をほしていました

人生だとか 生きるとはだとか 大それた事ばかり言ってばかりで その実 実人生がいっこうについていきませんが

ゴッホの描いた ひまわり は太陽に向かう習性があります。

黄色い絵の具が安かったから ひまわりなんだとも 言われますが

僕は ゴッホも 光へと向かっていたんではと 自分なりに 解釈しています

夜に日はのぼらない

なれど

朝になればのぼる

今までも 沢山の 人の夜に朝が来るのを この目で見てきました。

恋文を書くような想いで 誰かが笑顔になれるように 

僕の 血が そこへと 向かう風を うけています