大いなる帰還【豚山肥太】

豚山肥太の詩と小説を綴るページ

ゆきのまち

ポケットを探しても切符がない

あんなに頑張って働いて買った

幸福行きの切符

どうしたのかな

どうしたのかな

僕はいつも肝心な時にこうなんだ

このままだと

空から不幸が降ってくる

沢山の不幸が降ってくる

駅舎に詰め込まれた

幸福行きの人達

足早に次々と

幸福行きの列車に乗っていく

これで最後かな

もう来ないかな

いつもきまって

大事なところで

切符を無くすんだ

ベルが鳴るよ

顔中から汗が噴き出てる

ベルが鳴るよ

不安で心臓が潰れそうだ

この街は沢山の不幸で溢れていて

もういたくないんだ

とうとうベルがなり

笑い声とともに

幸福に向い列車は走っていく

遠のいていく列車

遠く 遠くなっていく 幸福

僕は つぶれそうな心で 家路につく

明日から また 切符の為に 働かなくちゃ

長い 長い 家路は 暗かったけど

やがて空はしらじらとあけていく

僕は遠くの山を見て

涙をこらえて

あの山の向こうにある幸福のことを考えていた

ふと 空から 欠片が落ちてきた

朝焼けの欠片が落ちてきたよう

幸福の街にも降るのだろうか

あの街には降らないだろう

ここは コウフクユキ の街だから

あの街には コウフク しか降らないんだ

悲しみの街に ユキ が降る

どこへ 行こうか 彷徨う 街

僕は この街で 命の全てを 果てるのだろうか

そんなことを考えながら

ユキに少し コウフクが 混ざっていないか 味見した

舌の上で 溶けたユキは 涙の味がした

ずいぶん 昔に 聞いたことがる

涙は コウフクへ 向かう 心の準備

辛いことがありすぎた あなたを 救う 心の準備

僕も いつか いけるだろう

もう たくさん 涙を流したから

街は コウフクの混じった ユキで 覆われて

少し 幸福だな と 僕は 思った