大いなる帰還【豚山肥太】

豚山肥太の詩と小説を綴るページ

キッドに捧ぐ【詩】



雨の強く降りそうな今日の様な日は

いつかの誰かの恋の話のような

切ないだけで

苦しいだけの

胸の思いがかきむしられる

だけども、この恋を止められぬ

僕らは誰かに恋もせずに

生きていけるほど

そんな上等な生き物でなし


ときめくことが証明で

ときめくことが偉大であり

僕らはちっぽけな舟にたまたま

相席して乗っただけかも知れない

だけれども、

雨の日には雨を思い

晴れの日には晴れを思い

たぶん、互いの事を考えなくても

どこか、同じ平面上の出来事で

あなたは、今夜、夜空を見てますか

僕は、終電間際に人に紛れて

夜空をカメラを取り出して

しっかり撮ってる対象がわかるようにして

僕は、今夜、夜空を撮影していました

なんだか、今夜の空の下で

あの子は辛いながらも

這いずるような気持ちでも

決して前向くことを

忘れないように

苦しいでしょうか

そんな思いを考えて

酔いは覚めたはずなのに

やけに泣き上戸のことでした

 

あいつは今では

立派に生きていて

たけくらべも懐かしく

もう、あんな時代のあったことさえ

忘れるほどに

時間があいつを強くして

時間が僕を砕いたろう

だけど、今夜の夜空には

いつかの僕もあいつも映しているよで

震える手でカメラを固定して

いつかの夜を思い出しては見てました

あいつだから行ける世界があるだろう

そこでどこまでも伸びていけ

晴れ晴れするほどに伸びていけ


よくできたケーキのお菓子のように

チョコレートのコーティングの様に

彼女の世間との間の葛藤は

あの頃よりかは薄いはず

どうして、あの頃気づけなかったろう

人の愛のある場所に

気づけずに傷つけあっては

寒さに震えていたのだろうと

もっと かっこ悪く 好きだったらよかった

いや、じゅうぶんかっこわるかったけど

そういう意味ではないからさ

ただ どこかで あなたも夜空に混じった

星の様に 自分を大事に 風邪などひかぬよに

辛いこと考えて寝ないように

どこかで 僕も願っています




あなたのくれた優しさは

今まで会ったどんな人とも違ってて

種類の違う人間だとか

そんな考えも吹き飛ばすほど

大きな人で

小さくて傷つきやすい心の人でもあったでしょう

結局、つきつめれば

あなたには

やさしさしか残りはしない

いつかの夜の酒の様に

朝から飲んで

次の日の朝まで

話の尽きることはなく

あなたがいるから

僕も存在できた

そんな季節があったから

寂しい季節の話はしないよに

時々、思い出しては、えづくように

どうしてだよと、胸ぐらつかみたくないくらい

悔しいだけで 寂しいだけで

誰かがどこかで見てたなら


この世の

数多の地獄を巡った

言葉にすれば、多様に含んでキッド達は

馬鹿げた世界で

傷を負いながら

今日もどこかで

あの人の事をと

あいつのことをと

思わずには生きれなくて

 

僕らキッドの行く先は

今もわかりはしないけど

悪くはないさと酔いにまかせた

今夜の様に

好きな歌の一つでも

ちゃんと大声出して

まばらな人の深夜の交差点の

真ん中に立って歌えるような事は

冬空の下のキッド達と

どこかで同じ平面上で

真夜中に大陸を渡った信号の様に


元気ですか?

辛いときは呼んで下さい

を繰り返しては

 

何も出来ないかも知れないけれど

下手くそな歌なら歌えるよ

あなたの素敵なところを全て言ってしまうくらいの

そんな歌なら歌えるよ

 

いつまでも

いつまでも

歌えるよ

キッドの歌を歌えるよ