大いなる帰還【豚山肥太】

豚山肥太の詩と小説を綴るページ

履歴書には書かないことだから【詩】

 

思いっきり飛ぶことと

より遠くへ より高くへ 

飛ぶこととは必ずしも 

同じじゃない

そんなことも知らないから

酷使した筋肉と骨の隅々で

私は、もう戻れない怪我をして

そして、今日にまた、飛ぼうとしている

今度こそはと

またもや、思いっきり飛ぼうとしている

 

少ないギャラリーを除いては

例年通りの大会だった

そうホスト役の男は言い出すと

高く杯を上げて

例年通りの大会を祝ったことだ

 

小さな街の教室で

始めた私の

ステップは

いつか、見事に世界をとらまえて

まさに未踏の地を踏むべくして

生まれたと

賛歌に溢れて

生きていた


悪い男のシケモクを

もらって一口吸い終わり

笑いあっては

泣いていた

いつかは

永遠にいつかだろう

そのことくらい

わかったさ

そんな、つもりの毎日で

この頃、時給が上がったよ

そんなこんなが幸せで

ステップにかけたことも

忘れたよ

忘れたことにしといたよ

もう、戻れないことにしてと頼んだよ

悔しくて泣いた夜のぶんだけ頼んだよ


だけど

誰かががんじがらめの

胸の奥

カギを開けたの

もう、それは犯罪だと言いたいくらい

私にとっては希望であって

幸せだから

もう、幸せにしないでって

笑いが止まらなくて

笑ってた

夜を巡って笑ってた


昔、昔に出たことのある

この街の小さな小さな大会に

ずいぶん、あの頃と時代を変えて

出ることにした。

もう、怖がらないことにしたからさ

しあわせになることを戸惑わない

それが不幸になることも含んでいても

 

小さな小さな大会で

私のステップの後日談

 

ありふれた人達のありふれた世界でも

生きていくことは素晴らしくて

それがどうとか もういいの

それで、どうなろうと

あの頃よりは随分、ありきたりな人間になったかも

だけれども、怖がらないで

言ってあげるわ

私は私でよかったと

思えなくなる時の為に書いておく

いつか、あなたの言葉が

どこまでも遠くへと、飛んでいっては

はるか高くへ、飛んでみては

初めて、教室にやって来た

小さい子に教えるステップのように

つまづきまくった気持ちと人生を

また、歩きだす

 

音楽になれるよに

あなたを賛歌する音楽になれるよに

いつまでも

私は言葉の中に

歌の中に

あなたこそ

我が生涯で

素晴らしい

 

それさえ歌えりゃ

空見て泣いた

夜空になっても空見て泣いた

誰かの詩だろうと

歌ってやる

幸せだって歌ってやる